心眼 まとめ

引用 心眼(しんがん)/落語: 落語あらすじ事典 千字寄席

浅草馬道に住む、目が不自由な按摩(あんま)の梅喜(ばいき)。

今日ははるばる横浜まで流しに行ったが、
ろくに仕事がなかったと、しょんぼりと帰ってくる。

顔色が真っ青なので、
恋女房のお竹が、
何かあったと勘づき、聞いてみると、
梅喜はこらえ切れずに泣き出した。

両親を早く亡くした梅喜が、
幼いころから育てた弟の金公に、
大恩ある兄の自分が藁(わら)にもすがる思いで金を無心に行くと、
事もあろうに目の不自由なのをあざけられ、
「『また食いつぶしに来やがった』と抜かしやがった。
もう悔しくて口惜しくて、いっそあのちくしょうの喉笛に食らいついて……と思ったが、
こんな不自由な体だから負けてしまうし、
いっそ面当てに軒ででも首をくくって死んでしまおうと本気で考えたものの、
親身になって心配してくれるおまえがさぞ力を落とすと思い、
人間は一心になったらどんなことでもできるのだから、
茅場町の薬師さまを信心して、
たとえ片方だけでも目を開けていただこうと気を取り直し、
横浜から歩いて帰ってきた
と、いう。

お竹は懸命に慰めて、
あたしも自分の寿命を縮めても、おまえさんの目が開くようにお願いするから
となだめ、その夜は寝かせる。

翌日から、
さっそく薬師如来に三七、二十一日の日参。

ちょうどその満願の日、
目が開かないので梅喜が絶望して、
いっそあたしを殺してくれと叫んでいるところへ、
得意先の上総屋のだんなが声をかける。

おまえ、目が開いているじゃないか
と言われてはっと気がつくと、
なるほど、見える見える、何もかもはっきりと目に映る。

さては夫婦の一念が通じたかと狂喜し、
いちいち「へえ、あれが人力車……あれが……」と確かめながら、
だんなについて浅草仲見世まで行く途中で、
自分が男前であること、
女房のお竹は人三化七の醜女だが、気だてのよい貞女であることを
だんなから聞かされた梅喜、
わが女房ながらそんなにひでえご面相かとがっかり。

そこでぱったり出くわしたのが、
これもお得意の芸者・小春。

誘われるままに富士横丁の「釣堀」という待合に入り、
杯をさしつさされつしているうち、
小春が
「実は、ずっとおまえさんを思っていた」
と告白し、誘惑する。

すっかり有頂天になった梅喜、
化け物面のお竹なんぞはすっぱり離縁して、
おまえさんと一緒になると怪気炎。

二人はしっぽり濡れ、いつしか一つ床に……。

そこへ、二人が待合に入ったという上総屋の知らせで、
お竹が血相を変えて飛び込んでくる。

いきなり梅喜の胸ぐらをつかんで、
「こんちくしょう、この薄情野郎っ」
「しまった、勘弁してくれっ、おい、お竹、苦しいっ」

途端にはっと目が覚める。

「うなされてたけど、悪い夢でも見たのかい」
という優しいお竹の言葉に、
梅喜我に返って、
「あああ、夢か。……おい、お竹、おらあもう信心はやめるぜ」
「なぜさ?」
「目が見えねえてえなあ、妙なものだ。寝ているうちだけ、よォく見える……」

概要
目が不自由な按摩(あんま)の梅喜(ばいき)氏と、氏の嫁氏が活躍する話。
人情話。