悋気の独楽 まとめ

あらすじ[編集]

ある商店の主人が、外出したまま家に帰ってこないので、主人の妻は「内緒で妾を囲っているのでは」と、気が気でない。「旦那(だん)さん知らんか?」と奉公人たちに訊いてまわるが、的の外れた返事ばかりを返されて要領を得ない。からかわれていると感じ、泣き出す妻に対し、女中のお松(あるいは、お竹、お清など)が「丁稚の定吉が旦那さんのお供をしとります」と密告し、自身の離婚経験を語りつつ、「御寮人(ごりょん)さん、一遍、旦那さんにおっしゃらな(言うべきことは言わないと)あきまへんで」とけしかける。
その頃、主人とともに妾宅に付いた定吉は、主人に「わしここに泊るから店に帰れ。うちの者(妻)には、ここのこと言うたらアカンで。何せ、えらく悋気強い(嫉妬深い)さかいな」と釘を刺され、得意先で碁の相手をしている、と嘘をつくように吹き込まれ、店に帰される。
帰った定吉は、店の本妻に対し、吹きこまれたとおり嘘をつく。本妻は「そうか、まあ御苦労はんやったさかいにな」と言って、定吉に薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)を与える。うまそうに食べる定吉に対し、本妻は「そのオマン(饅頭)の中には、熊野の牛王さん入ったある。嘘ついたら血ィ吐いて死ぬで」と脅す。「わて、旦那さんに五十銭もろた義理がおます」「あんた、たったの五十銭のために死んでええのんか? わたい(私)は(定吉が本当のことを言えば)一円あげます」定吉はやりこめられる。
定吉は、死ぬかもしれない怖さと一円ほしさで、主人に妾がいることや、妾宅の所在地を白状する。そのとき本妻は、定吉が懐に3つのコマを持っているのを見つける。定吉によると、これは主人がそれぞれコマを本妻、妾、主人に見立て、回した主人のコマが、本妻・妾どちらのコマに当たったかで泊まる家を決めるのに使うものであるという。定吉がコマを回すと、主人のコマは妾のコマに当たった。本妻はヒステリー状態に陥る。
「まあ、悔しやの。定吉、一遍回しなはれ……キイー、腹の立つ。定吉! もう一遍やんなはれ」定吉は何度もコマを廻すが、主人のコマはどうしても妾のコマに当たってしまう。
「あ、御寮人さん、こら、あきまへんわ」「なんでやの?」「へえ、肝心のしんぼう(心棒/辛抱)が狂うてます」

感想
女性の悋気(嫉妬)をテーマにした噺。
嫉妬している女性が怖いけどかわいい。