今戸の狐 まとめ

引用 今戸の狐(いまどのきつね)/落語: 落語あらすじ事典 千字寄席

今戸の狐(いまどのきつね)/落語
この噺の根本は、いすかのかけ違い。その妙が楽しめます。

安政のころ。

乾坤坊(けんこんぼう)良斎という
自作自演の噺家の弟子で、
良輔(りょうすけ)という、こちらは作者専門の男。

どう考えても作者では食っていけないので、
一つ噺家に転向しようと、
当時大看板で、三題噺の名人とうたわれている
初代・三笑亭可楽に無理に頼み込み、弟子にしてもらった。

ところが、期待とは大違い。

修行は厳しいし、
客の来ない場末の寄席にしか出してもらえないので、
食う物も食わず、これでは作者の方がましだったという体たらく。

内職をしたいが、
師匠がやかましく、
見つかればたちまちクビは必定。

しかし、もうこのままでは餓死しかねないありさまだから、
背に腹は代えられなくなった。

たまたま住んでいたのが今戸で、
ここは今戸焼きという、
素焼きの土器や人形の本場。

そこで良輔、
もともと器用な質(たち)なので、
今戸焼きの、狐の泥人形の彩色を、
こっそりアルバイトで始め、何とか糊口をしのいでいた。

良輔の家の筋向かいに、
背負い小間物屋の家がある。

そこのかみさんは千住(通称骨=コツ)の女郎上がりだが、
なかなかの働き者で、
これも何か手内職でもして家計の足しにしたいと考えていた矢先、
偶然、良輔が狐に色づけしているところを見て、
外にしゃべられたくなければあたしにも教えてくれ
と強談判。

良輔も承知するほかない。

一生懸命やるうちにかみさんの腕も上がり、
けっこう仕事が来るようになった。

こちらは中橋の可楽の家。

師匠の供をして夜遅く帰宅した前座の乃楽(のらく)が、
夜中に寄席でクジを売って貰った金を、
楽しみに勘定していると、軒下に雨宿りに飛び込んできたのが、
グズ虎という遊び人。

博打に負けてすってんてんにされ、
やけになっているところに
前座の金を数える音がジャラジャラと聞こえてきたので、
これはてっきりご法度の素人バクチを噺家が開帳していると思い込み、
これは金になるとほくそ笑む。

翌朝、
早速、可楽のところに押しかけ、
お宅では夜遅く狐チョボイチ(博打の一種)をなさっているようだが、
しゃべられたくなかったら金を少々お借り申したい
と、ゆする。

これを聞いていた乃楽、
虎があまりキツネキツネというので勘違いし、
家ではそんなものはない、
狐ができているのは今戸の良輔という兄弟子のところだと教える。

乃楽から道を聞き出し、
いまどまでやって来た虎、
早速、良輔に談じ込むが、どうも話がかみ合わない。

「どうでえ。オレにいくらかこしらえてもらいてえんだが」
「まとまっていないと、どうも」
「けっこうだねえ。どこでできてんだ?」
「戸棚ん中です」

ガラリと開けると、中に泥の狐がズラリ。

「なんだ、こりゃあ?」
「狐でござんす」
「間抜けめっ、オレが探してんのは、骨の寨だっ」
「コツ(千住)の妻なら、お向こうのおかみさんです」

感想
幕末の江戸の場末の風俗や落語家の暮らしぶりが分かって良い。