首提灯 まとめ

引用 首提灯 - Wikipedia

あらすじ[編集]

江戸の夜は暗い。そんな闇の中を一人で歩いていると、「新刀の試し斬り」だか「斬りとり強盗」だかの辻斬りに遭うことがあるかも知れない…… 品川遊郭へと通じる夜道……一人の江戸っ子が、べろべろに酔っ払って怪気炎を上げている。ばくちか何かで大もうけしたか、ご機嫌に「これからお大尽遊びだ」と独り言をのたまったところで……慌てて口を押さえる。
「さびしい所へ出ちまったな……芝の山内かい? この辺、何だか物騒な噂があったな。『金の話』はまずかったかな……」
少々酔いが醒めたが、何とかカラ元気を振り絞って怒鳴り始める江戸っ子。
「さあ、辻斬り出やがれ。追はぎ出ろ! 出たら塩つけてかじっちまうぞ」
「おい、待て……」
言った途端に声をかけられ、江戸っ子思わず飛び上がる。
「……もう出たよ。何も頼んだからって、こんなにすぐ出なくても……」
提灯の灯をかざして顔を見上げると、そこに居たのは背の高い侍。
「おじさん、何か用かい?」
「武士をとらえて、『おじさん』とは何を申すか」
「へへっ。そっちが『おい』だってから、『おじさん』って言ったまでだい。で、何の用で?」
「町人、これより麻布の方へはどう参るか」
この侍、どうも地方の出らしく言葉がなまっている。
すると酔っぱらい、相手を田舎侍と見たか、酔って大きくなった気の勢いで罵詈雑言を吐き出す。ここが江戸生まれと粋がった馬鹿な江戸っ子の真骨頂という奴で……
「どこィでも勝手にめえっちまえ、この丸太ん棒め。ぼこすり野郎、かんちょうれえ!!」
「……その『かんちょうれえ』と申すのは何じゃ?」
「何ィ? そんな事、俺が知るわけねぇだろうが。変なツラするねえ、このモクゾー蟹!」
さすがに武士もむっとする。
「何を申すか。貴様、二本指しているのがわからぬのか?」
「何だ? 二本……大小が目に入らぬかって? ンなもの入った日にゃ手妻師(手品師)になれらい! 二本差しが怖くて焼き豆腐が食えるか! 気のきいた鰻を見ろい! 五本も六本も刺してらあ。お前、そんな鰻を食ったことが在るかってんだ! ……俺も久しく食ってねぇが」
口の回る割にセコな奴である。
「とぼけた事を申すな。わしはただ……」
「追いはぎがしたいってか? それとも試し斬りか。さあ斬りゃあがれ。斬って赤え血が出なかったら取りけえてやる。このスイカ野郎!!」
「もうよい……」
相手は愚かな酔っぱらい、と諦め、さっさと立ち去ろうとする侍。
ところがせずともよいものを、馬鹿な江戸っ子、すれ違いざまに痰を吐きかけた。また間の悪いことに、痰が武士の紋服に、べちゃっとかかる。
侍の形相が変わった。
「おのれ! わしの侮辱だけならまだしも、殿より拝領した紋服を……よくも……!」
刀の柄に手が掛かると見る間に「エイヤッ!」、目にも止まらぬ居合抜き。
次には侍、懐紙で刀をぬぐうと、鞘に納めてすたすたと向こうへ行ってしまう。
「サンピンめ、つらァ見やがれ!」
敵が消えたので、余計に威勢が良くなった江戸っ子がまた歩き出した……
なんだか首が横にずれる。戻しても戻しても、歩いているうちに横を向く。
変だと思って手を当てると、なんと襟元が血でベットリ……持ち上げたら、外れた。
「あッ、斬りゃあがった!」
首は見事に切断済み。田舎侍、馬鹿を生かして首を斬るとは、大変な剣の使い手であった。馬鹿が慌ててももう遅い。
「うへえ、えれえことになっちゃった……ニカワでつけたら保つかな?」
おろおろしていると、突き当たりが火事で大混乱。
丁度知っている家だったので、火事見舞いに駆けつけ、受付で自分の首を突き出して
「ヘイ、八五郎でございます」

概要
八五郎氏と侍が喧嘩する。

八五郎氏が、首を切られる。

八五郎氏が、切られた首を手にもって、身分を証明するものとしてつかったり、提灯としてつかったりする。

感想
自分の首を、道具としてつかうところが、無茶苦茶で面白い。